【百物語 第六十六話】頭を撫でる
あまり霊的な経験などない私が唯一体験した不思議な話です。
ある日ご近所で急な葬式が入りまして。
家の地域は組合員として通夜も告別式も出るのが決まりになっていて。
通夜の前日には集会所に集まってそれぞれの役割を決めなくちゃならないんですね。
なので一軒葬式が入るとそりゃ大変なんですが。
告別式の当日、何ともう一軒不幸がありまして、立て続けなんで、これ以上は仕事は休めないとか、体が辛いお年寄りなんかは香典渡して家に線香あげに行くでよしとさせてもらいたいなんて人がぞくぞくでて。
まぁ無理もないですよ、朝の出棺から付き合い納骨まで、日も暮れてみんな疲れが出てましたから。
二件目のお宅もそれを承知で、出てくださる方だけって申し出てくれたので甘えた方も多かったんでしょう。
しかし私の性格上、一軒目キッチリ付き合ったのに、二軒目は線香あげにいくだけってのは悪いなって気持ちもあって参列することにしたんです。
そしたら案の定疲れで微熱が出て葬儀の後から体調を崩して寝込んでしまいました。
微熱が引かず二階で休んでいた時の事です。
そろそろ起きて下へ降りようかというとき。
突然背後から静電気のような微弱電流が背中に走りましてね。
何かが頭を撫でてくるのがわかりました。
優しいんですが、指が頭皮に当たる感覚もあって、人の手だとわかりました。
怖いという感覚がなかったので、私は身を委ねるように安心した気持ちで暫くいました。
でも目を開けようとすると見ちゃいけないものだと言わんばかりに念仏のような声が聞こえてきて、私はそこで初めて怖いと思ったんです。
次の瞬間後ろから何かが通り抜けるような圧迫感があって、怖い!下に降りなきゃって思いました。
するとインターホンがなって、誰か客が来たのがわかりました。
下には旦那が居たので、私の代わりに出てくれたのですが、玄関先で何やら話している感じでした。
客が帰ったようなので一目散に一階にかけ降りた私は、今しがたの出来事を旦那に話したのです。
すると旦那は、お礼に来たんじゃないかなぁと言いました。
何と先程の来客は、二軒目に不幸があった家の息子さん夫婦だったのです。
思うに、息子さん達と一緒に、亡くなったおばあちゃんがお礼に回って来られたのではないかと思います。
頭を撫でてくれたのは、熱に浮かされる私に、ありがとうの意味を込めてではないかと勝手に自己解釈しております(笑)
まぁ無理もないですよ、朝の出棺から付き合い納骨まで、日も暮れてみんな疲れが出てましたから。
二件目のお宅もそれを承知で、出てくださる方だけって申し出てくれたので甘えた方も多かったんでしょう。
しかし私の性格上、一軒目キッチリ付き合ったのに、二軒目は線香あげにいくだけってのは悪いなって気持ちもあって参列することにしたんです。
そしたら案の定疲れで微熱が出て葬儀の後から体調を崩して寝込んでしまいました。
微熱が引かず二階で休んでいた時の事です。
そろそろ起きて下へ降りようかというとき。
突然背後から静電気のような微弱電流が背中に走りましてね。
何かが頭を撫でてくるのがわかりました。
優しいんですが、指が頭皮に当たる感覚もあって、人の手だとわかりました。
怖いという感覚がなかったので、私は身を委ねるように安心した気持ちで暫くいました。
でも目を開けようとすると見ちゃいけないものだと言わんばかりに念仏のような声が聞こえてきて、私はそこで初めて怖いと思ったんです。
次の瞬間後ろから何かが通り抜けるような圧迫感があって、怖い!下に降りなきゃって思いました。
するとインターホンがなって、誰か客が来たのがわかりました。
下には旦那が居たので、私の代わりに出てくれたのですが、玄関先で何やら話している感じでした。
客が帰ったようなので一目散に一階にかけ降りた私は、今しがたの出来事を旦那に話したのです。
すると旦那は、お礼に来たんじゃないかなぁと言いました。
何と先程の来客は、二軒目に不幸があった家の息子さん夫婦だったのです。
思うに、息子さん達と一緒に、亡くなったおばあちゃんがお礼に回って来られたのではないかと思います。
頭を撫でてくれたのは、熱に浮かされる私に、ありがとうの意味を込めてではないかと勝手に自己解釈しております(笑)
ぺさん、投稿ありがとうございました
【百物語 第六十五話】黒い塊
曾祖母に会いに、曾祖母がいる介護施設へ行きました。
久々に会うのでとても喜んでいました。そんな中施設の中に気になるものがありました。それは…通気口の穴があり、その周りに黒くただれた塊?の様なものがありました。最初は気にならなっかたのですが、よくみると血に見えたんですが「まさかな」と思い、曾祖父に手を振りながら帰りました。
家に帰ってからしばらくあの塊が何なのかと気になりました。
そんなことをしていくうちにだんだん眠くなり、うとうとしたころ目の前に目がぼやけてよくみえなかったのですが、目の前に全身黒い人?のようなのが現れて「おいおい夢かよwwww」と思い、目を擦り辺りを見ましたが何とも無し。いつもの自室でした。
黒い人の様な奴もいなく落ち着いたんですが、寝ているときにぶつぶつ何か聞こえてたんです。その夜は震えながらすごしました。
その後心霊などに詳しい友人にその話を振ってみました。
俺「で、そんなことがあったのよw信じらんないだろw」
友人「でもそれってガチでヤバいかもよ」
俺「oh…」
友人「そういうのってさぁ祓ってもらったほうがいいぜ」
というわけで友人の勧めで近くの神社に行ってきました。祓い終えたあとお札を何枚かもらいましたが特に何も起きずに終わったかにみえました。が…
実はその後変な夢をみました。
どこだがわからない真っ暗な道を歩いている。すると後ろからあのぶつぶつとお経を唱えているような声が。
段々声が近づいてきた、ヤバい逃げなきゃ。そう思い暗闇の中を駆け抜ける。でもヤツは近づいてくる。ヤバい捕まる。そう思っていると目が覚めました。よく見ると病室でした。熱中症だったらしく親が見つけてくれなければ危ういところでした。あの後変なことも何も起きません。
でもあの後、曾祖母の介護施設の黒い塊は消えていた。
黒い人の様な奴もいなく落ち着いたんですが、寝ているときにぶつぶつ何か聞こえてたんです。その夜は震えながらすごしました。
その後心霊などに詳しい友人にその話を振ってみました。
俺「で、そんなことがあったのよw信じらんないだろw」
友人「でもそれってガチでヤバいかもよ」
俺「oh…」
友人「そういうのってさぁ祓ってもらったほうがいいぜ」
というわけで友人の勧めで近くの神社に行ってきました。祓い終えたあとお札を何枚かもらいましたが特に何も起きずに終わったかにみえました。が…
実はその後変な夢をみました。
どこだがわからない真っ暗な道を歩いている。すると後ろからあのぶつぶつとお経を唱えているような声が。
段々声が近づいてきた、ヤバい逃げなきゃ。そう思い暗闇の中を駆け抜ける。でもヤツは近づいてくる。ヤバい捕まる。そう思っていると目が覚めました。よく見ると病室でした。熱中症だったらしく親が見つけてくれなければ危ういところでした。あの後変なことも何も起きません。
でもあの後、曾祖母の介護施設の黒い塊は消えていた。
軍艦大和さん、投稿ありがとうございました
【投稿】宝探し
…おい。お前らは宝探しって、好きか?…違ぇよ。探すほうじゃねえ。…隠すほうだ。俺は神社の出だからあんまりそういうのはやってないんだけどな。
俺が昔、身を住んでいた小さな村には、そこに見合わないくらいでかい図書館があってな。そりゃあもう本の虫には天国のような場所だったぜ。子供が見るような絵本から、他じゃ手に入らないような珍しい物も多く蔵書されていた。その上、質もいい。管理人の爺さんもよく出来た人間で、俺もよく利用していたんだ。
だが、俺がそこを利用し始めたころはピンピンしていた爺さんも、とうとうある年に体の具合を悪くしちまって、図書館を閉めることになった。貴重な本たちは無意味に暖炉にくべられ、そして持ち主が特に愛した書物は、冷たくなった主人と共に俺の元へと還っていった。
そして爺さんが死んで数年ほど経ったころ、俺は爺さんの家に招待された。招待主は彼の孫。俺と爺さんが仲が良かったのをどこからか聞いて来たそうだ。爺さんによく似た蒼い目の、そりゃあもう美しい娘さんだったな。
彼女は到着した俺を爺さんの書斎へと通すと、一冊の本を手渡してきた。べっとりとしみのついた気味の悪い本だ。捲れば中はただの日記で、書かれていた持ち主の名前はどこにでもいるような女のものだった。
…彼女は俯いたまま、ただ『これを受け取って欲しい』と小さな声で懇願してきた。…でもよ、おかしくねぇか?わざわざこんな日記を渡すために、会った事もないような人間を屋敷に呼ぶなんて。
不思議に思った俺は、彼女にこの日記のことを尋ねた。…そしたらいきなり泣き出しちまって…。…まあ、このときからなんとなく嫌な予感はしてたんだけどな。
泣いている人間から情報を得るのは大変だったが、まあ、簡単に言っちまうと、…その日記は呪われているらしい。祖父である図書館の主人が死んでから、夜な夜な書斎をあさりに、人ではない何かが現れるらしいんだ。とうとう俺に泣きすがり始めちまった彼女に負けて、俺はこいつを譲り受けることにしたんだ。
その晩。俺はその日記を読んで過ごすことにした。中身は普通の、そりゃあ…なんというか…純粋な日記だったぜ?誰がすきとか、愛してる、とか。そんなことばっかり書いてあった。…だからなにがそんなおぞましいものを呼ぶのか分からなかった。…その日記の中盤に差し掛かるまでは、な。
…なんつーか…一頁、べっとり何かが付着したところがあって…その日の日記には、『腕は庭のバラ園に』とだけ、一言書かれていたんだ。何のことだろうと、始めは首を傾げていたんだが、…あったんだよ。そんな事件が。ここ、イギリスでな。
捜査では痴情の縺れで片されていたが詳細は不明。…俺の持つ日記には五体の居場所が転々と書かれていたんだが、後で過去の新聞で確認ところ、すべて一致した。…まめな女だったんだろう。…それか相当のキチガイだな。殺した方法、様子、時間、天気までしっかり書かれていた。読んでいて寒気がしたぜ。これを書いた手で、自分の男を切り刻んでいたんだろうと思うとな。
…あ?犯人はどうしたかって?…まだ捕まってねえよ。逃げ切ったんだ、あの女。…いや神に逃がされたと言うべきか。…残念ながら犯人は逃亡中に事故死。アメリカのハンバーガーのパティみたいにぐっちゃぐちゃで発見された。何とも後味の悪い終わりだったようだ。
…終わった事にしろ、これも全て事件の証拠になる。俺は警察の友人に日記の大まかな説明と、持ち主であった彼女の住所、名前を教え、会う約束を取り付けてから、その晩は寝床についた。…まあ、すぐに電話のベルに叩き起こされたけどな。……さて、どうしてだと思う?
…出たんだよ。日記の女が。
…翌日早朝、俺に本を譲った娘が庭の花壇でばらばらになって発見された。…そして、その話をした友人も、その近くの川で同じくばらされて発見された。…新聞では大きく取り上げられたぜ。例の殺人者の二世が現れたと。でも警察は犯人の痕跡が全く掴めないで頭を悩ませていた。…当たり前だ。あの女がやったんだから痕跡なんか残るはずがねえ。……あ?なんでその女がやったかって思ったか?…最近、俺の犬やら猫やらが威嚇してるんだよ。ドアの方向に。…『悪いもの』が来たっていうように。
幸い、俺の存在はばれずに済んだらしい。…俺は急いでロンドンにある書庫に日記を隠した。…何重にも、儀式を施して。
…あ?なぜあの女が日記を探すのか…か?…あの女はびびってるんだよ。死んだ今になっても、誰かの手で自分の犯行が外部にばれちまうことを。
…ん?その日記はどこにあるって?まだロンドンの書庫にあるぜ?…そういや、それっきり儀式の更新に行ってねえな…。あ?…何言ってんだよ。定期的に見てやらねえとダメに決まってんだろ。効果がなくなったらすぐばれちまう。…俺の儀式だってそんなに万能じゃねえ。一番最後に見たのは何十年前だったか…くそ、すっかり忘れてたな…この前俺の子と書庫の掃除をしたときにしてくりゃあ良かった。…って、あ。そうそうお前らも気を付けろよな。この話は滅多やたらにするんじゃねえぞ。女の耳ってのはよく利く。特に噂話には敏感だからな。…は?何でかって?…考えりゃ分かるだろ?本の持ち主だってばれてねえから俺の首は繋がってるんだぜ?
…ふふ。分かっただろ?お前らは話を聞いちまった。日記の在り処も知っちまった。
…お前らはもう、宝探しを企てた俺の立派な共犯者だ。
だが、俺がそこを利用し始めたころはピンピンしていた爺さんも、とうとうある年に体の具合を悪くしちまって、図書館を閉めることになった。貴重な本たちは無意味に暖炉にくべられ、そして持ち主が特に愛した書物は、冷たくなった主人と共に俺の元へと還っていった。
そして爺さんが死んで数年ほど経ったころ、俺は爺さんの家に招待された。招待主は彼の孫。俺と爺さんが仲が良かったのをどこからか聞いて来たそうだ。爺さんによく似た蒼い目の、そりゃあもう美しい娘さんだったな。
彼女は到着した俺を爺さんの書斎へと通すと、一冊の本を手渡してきた。べっとりとしみのついた気味の悪い本だ。捲れば中はただの日記で、書かれていた持ち主の名前はどこにでもいるような女のものだった。
…彼女は俯いたまま、ただ『これを受け取って欲しい』と小さな声で懇願してきた。…でもよ、おかしくねぇか?わざわざこんな日記を渡すために、会った事もないような人間を屋敷に呼ぶなんて。
不思議に思った俺は、彼女にこの日記のことを尋ねた。…そしたらいきなり泣き出しちまって…。…まあ、このときからなんとなく嫌な予感はしてたんだけどな。
泣いている人間から情報を得るのは大変だったが、まあ、簡単に言っちまうと、…その日記は呪われているらしい。祖父である図書館の主人が死んでから、夜な夜な書斎をあさりに、人ではない何かが現れるらしいんだ。とうとう俺に泣きすがり始めちまった彼女に負けて、俺はこいつを譲り受けることにしたんだ。
その晩。俺はその日記を読んで過ごすことにした。中身は普通の、そりゃあ…なんというか…純粋な日記だったぜ?誰がすきとか、愛してる、とか。そんなことばっかり書いてあった。…だからなにがそんなおぞましいものを呼ぶのか分からなかった。…その日記の中盤に差し掛かるまでは、な。
…なんつーか…一頁、べっとり何かが付着したところがあって…その日の日記には、『腕は庭のバラ園に』とだけ、一言書かれていたんだ。何のことだろうと、始めは首を傾げていたんだが、…あったんだよ。そんな事件が。ここ、イギリスでな。
捜査では痴情の縺れで片されていたが詳細は不明。…俺の持つ日記には五体の居場所が転々と書かれていたんだが、後で過去の新聞で確認ところ、すべて一致した。…まめな女だったんだろう。…それか相当のキチガイだな。殺した方法、様子、時間、天気までしっかり書かれていた。読んでいて寒気がしたぜ。これを書いた手で、自分の男を切り刻んでいたんだろうと思うとな。
…あ?犯人はどうしたかって?…まだ捕まってねえよ。逃げ切ったんだ、あの女。…いや神に逃がされたと言うべきか。…残念ながら犯人は逃亡中に事故死。アメリカのハンバーガーのパティみたいにぐっちゃぐちゃで発見された。何とも後味の悪い終わりだったようだ。
…終わった事にしろ、これも全て事件の証拠になる。俺は警察の友人に日記の大まかな説明と、持ち主であった彼女の住所、名前を教え、会う約束を取り付けてから、その晩は寝床についた。…まあ、すぐに電話のベルに叩き起こされたけどな。……さて、どうしてだと思う?
…出たんだよ。日記の女が。
…翌日早朝、俺に本を譲った娘が庭の花壇でばらばらになって発見された。…そして、その話をした友人も、その近くの川で同じくばらされて発見された。…新聞では大きく取り上げられたぜ。例の殺人者の二世が現れたと。でも警察は犯人の痕跡が全く掴めないで頭を悩ませていた。…当たり前だ。あの女がやったんだから痕跡なんか残るはずがねえ。……あ?なんでその女がやったかって思ったか?…最近、俺の犬やら猫やらが威嚇してるんだよ。ドアの方向に。…『悪いもの』が来たっていうように。
幸い、俺の存在はばれずに済んだらしい。…俺は急いでロンドンにある書庫に日記を隠した。…何重にも、儀式を施して。
…あ?なぜあの女が日記を探すのか…か?…あの女はびびってるんだよ。死んだ今になっても、誰かの手で自分の犯行が外部にばれちまうことを。
…ん?その日記はどこにあるって?まだロンドンの書庫にあるぜ?…そういや、それっきり儀式の更新に行ってねえな…。あ?…何言ってんだよ。定期的に見てやらねえとダメに決まってんだろ。効果がなくなったらすぐばれちまう。…俺の儀式だってそんなに万能じゃねえ。一番最後に見たのは何十年前だったか…くそ、すっかり忘れてたな…この前俺の子と書庫の掃除をしたときにしてくりゃあ良かった。…って、あ。そうそうお前らも気を付けろよな。この話は滅多やたらにするんじゃねえぞ。女の耳ってのはよく利く。特に噂話には敏感だからな。…は?何でかって?…考えりゃ分かるだろ?本の持ち主だってばれてねえから俺の首は繋がってるんだぜ?
…ふふ。分かっただろ?お前らは話を聞いちまった。日記の在り処も知っちまった。
…お前らはもう、宝探しを企てた俺の立派な共犯者だ。
言語フェチさん、投稿ありがとうございました
【百物語 第六十四話】滝
今から5~6年前ぐらい、会社の先輩と2ケツでツーリングに行った時の話です。
ツーリングに出掛けたのは夏の終わり頃、日中は汗ばむが、陽が暮れると肌寒くなるぐらいの時期でした。
ツーリングの前日、一緒に行く先輩の家に泊まり、二人で地図や観光案内を見ながら何処に行くかを話し合い、道の駅や絶景スポットなど、いくつかの目的地を決め、数ある目的地の一つに観光マップに載っていた『滝』をルートに組み込みました。
そして翌日、自分が運転。先輩が後ろのシートに乗りツーリング出発。天気も良く、いくつか決めたルートも段取り良く回り、いよいよ見所の滝へ向かうぞ~とテンション高めでバイクを飛ばして行きます。
さてこの滝なのですが、関西の南のほうに位置する滝で、人手が少なく落差もかなりの高さがあり、更に滝壺の裏に回る事が出来て、流れ落ちる見事な滝を裏側から見れるというものでした。しかも観光案内の雑誌に載ってるぐらいなので期待出来るだろうと。
しばらく走っていると『○○滝↑』という古ぼけた小さい立て看板が出てきたのでその看板に従い走っていると、地図には載ってない細い山道にどんどん入っていく。上り下りが激しくなり、道も車じゃ通れないほど細く荒れた道になっていた。
本当にこっちで合ってんのか?という不安を抱えたまま結構長い時間バイクを走らせ、ようやくその滝の入口らしき場所に到着した。雑誌に載っていたほどなので最低限の駐車場的スペースを期待していたが、駐車場どころかバイク一台止めるスペースすらも無かったので、仕方なく山肌に立て掛けるような感じでなんとか止めました。
バイクは止めたもののまともな案内看板などは無く、山中への入口(?)からは滝は全く見えず、滝の流れる音すらも全く聞こえませんでした。しかし通って来た道にもそれらしい入口も無かったので多分ここだろうと。とりあえず一服して(ちゃんと携帯灰皿は持ってます)さァ山に入ろうか、としたところで急に先輩のMさんが渋りだす。
M「俺はここでいいや。○○一人で行っておいでや」
俺「いやいや、なんでなんスか。せっかくここまで道なき道を走って来て滝は目前やのに」
M「いや…まァ…滝まで遠そうやし、体力無いからこの山道を歩いて行くのはしんどいわ。ここでのんびりしとくから○○行って来な。あとで写真見せてもらえたら俺はそれで十分やから」
俺「…分かりました。ほんなら僕一人で行って来ますわ!写真見てからやっぱり見に行けば良かったァ~って思っても知らないっスよ!」
そんな感じのやり取りをして自分一人で滝まで行く事に。
山道へ入り5~6分ほど歩いてもまだ滝の音すら聞こえず、最初は歩きやすかった道も奥へ進むに連れてどんどん歩きにくくなり、バイク用のブーツだとかなり厳しくなってきた。そして、滝へ近付くに連れて段々と心細いような、不安な気分になりました。まァさっきまでMさんと一緒にいたのに急に一人っきりになったからだろうな~なんて思いながら歩を進め、大体10分ほど歩いたところで滝の音が聞こえ、大きな滝が姿をあらわしました。
雑誌に載っていた通り凄く立派な滝で、実際に目の当たりにすると言葉を失うほどでした。しかしそんな感動的な気持ちとは裏腹に「早く戻りたい」という感覚がありました。普段なら滝を眺めながら一服してしばらくのんびりするンですけど、この時ばかりは何故かそんな気分には全くならない。元々一人っ子で一人でいるのは慣れてるし寂しいとも思わないハズの自分が、早くMさんのいる場所に戻りたいと思っていました。
「ここまで来て一人でいるのが心細いなんて情けないこと言うてられるか!せめて滝の綺麗な写真は撮らんとな!せっかくやから滝の裏側も見ておかんともったいない!」と、自分に言い聞かせて、持っていたデジカメで何枚か滝の写真を撮影。しかし何枚撮ってもピントが合わず、全てピンボケの写真ばかり。
この辺りから「もうここには居ないほうがいい。写真も撮らないほうがいい」と思い始めたのだが、せっかく来たのに…という悔しさが勝り、半ば意地になってもっと綺麗ないい写真を撮ろうと少し場所を移動。
滝の真ん前から少し左側にボロボロの梯子が立て掛けてあり、滝の裏へ行けるようになっていた。その梯子を上って左斜めの角度から滝を撮ろうと梯子に手をかけた時、なんとも言えない空気が流れました。自分は霊感が全く無いので上手く表現は出来ませんが、とにかく進みたくない重たい空気。
霊感が無いせいか、危ないとか怖いとかの感覚が無く、自分としてはこのワケの分からない感覚が何なのか分からず、躊躇いながらも梯子を上りました。
梯子を上ると多少の広さの空間があり、清掃されていない泥や蔦だらけの木のベンチが一つ。そして、梯子を上る前よりも更に澱んだ重たい空気。それは滝の裏へ近付くほどに重さを増すような感じで、あまりの異様な空気にそれ以上は全く進めず、そこで写真を撮ったらすぐ戻る事にしました。
デジカメの電源を入れて滝に向かってシャッターを切ると、テレビの心霊番組でやってるのと同じようにいきなり電源が切れました。何をどうしても電源が入らず、一度バッテリーを抜いてから再度電源を入れて撮影開始するも手動ではシャッターが切れず、セルフタイマーで撮影を試みる事にしました。
泥や蔦などで汚れたベンチの多少綺麗な場所にデジカメをセットしてセルフタイマーを作動させ、自分は滝を背にした状態でデジカメのほうを向く。そして時間が来たらタイマーで自動撮影。上手く撮れていないとマズいと、念の為もう一枚同じ手順でタイマー撮影。
写真を撮り終え、撮った写真がどんなものか確認しようとデジカメを手にするとまたもや電源が切れました。ここまで連続して怪現象が起きるとさすがに怖くなり、もう写真確認どころじゃないとその場を立ち去ろうとした時、
『パシャッ!』
…と、操作もしていない、ましてや電源の切れたデジカメのフラッシュが急にたかれたかと思うと、耳の裏から背中にかけて今まで感じた事の無い凄い悪寒。一瞬にして全身に鳥肌が立つのが分かり、血の気が引くほどゾクッとしました。その悪寒と同時に、ベッタリと張り付くような感じの視線を背中の1m後ろぐらいに感じました。
怖い話の中でよくある「視線を感じる」という表現を、いつも「視線なんてそんなに分かるか?w」と小馬鹿にして読んでましたが、実際に自分が体験するとこれほどまでに分かるものかと痛感。肌や感覚で分かるほどの視線というのは、重さと粘り気のある見えない空気に触られてるような気持ちの悪い感覚と寒気でした。
「いやいや、これはアカン。ホンマにアカンやつや。心細いとかじゃない別の違和感を感じた時点で戻れば良かった…」
自分は霊感なんて無いです。姿を見た事も無ければ音や声を聞いた事すら無い。それでも、今この場で振り向いたら確実に『なにか』を見るだろうと思い、自分の戻るべき道だけを見ながら進みました。この時点でもう半泣き。
上って来た梯子を下りる時は、梯子を下りる自分を上から『なにか』が見ている感覚が常にあり、とにかく足を踏み外さないよう、そして絶対に上を見ないよう慎重に降りました。
そのまま来た道を戻るのですが、何故か自分の頭の中には「急いだら転ばされる」という感覚(?)がありました。Mさんとバイクの待つ山の入口までは徒歩で10分。もし怪我でもして歩けなくなれば助けも呼べない。自分がこの場に残る羽目になると、恐らくその『なにか』の思うツボだと思い、足下をしっかり確認しながら決して急がず焦らず、そして絶対に振り向かないように何も考えず来た道を戻りました。
しばらく無心のまま歩き続け、ようやく入って来た山の入口が見え、小さくMさんの姿と自分のバイクが見えました。すぐにでも駆け寄りたかったンですが、ここで無駄にMさんを怖がらせても仕方ないなと思い、精一杯平常心を保ちゆっくりと山を抜けました。
M「遅かったな。どうやった?」
俺「いやァ~、メチャクチャ良かったっスよ!やっぱ雑誌で見るのと実際に自分の目で見るのとはちゃいますね!」
M「そっかそっか。ほな出発しようや」
俺「えっ?ちょっとぐらい話し聞いて下さいよ。一服もしたいし」
M「うん、あとで聞くわ。とりあえずこの場所から離れようや。○○がどうしても滝が見たいって言ったから我慢してたけど、俺この場所は嫌や。今は○○だってそうやろ?」
俺「俺っスか?いや別に…涼しくて気持ちいいなァ~ぐらいですけど…」
M「いや、もう嘘つかんでエェよ。よっぽど怖い思いしたんやろ。必死に平常心保とうとしてるけどさっきからメッチャ声震えてるし、なによりな、○○が山から出てきた時の顔色が尋常じゃなく真っ青やった。今も青冷めてるで。ミラーで見てみ?」
Mさんに言われるがままバイクのミラーで自分の顔を見た。これが本当に自分なのかと思うほど血の気が無く真っ青になり、自分の顔にも関わらず、ミラーに映る顔は生きてる人間の顔じゃないように思えた。その瞬間、全身が痙攣するほど激しい悪寒に襲われ、またこの悪寒とほぼ同時にMさんに強く背中を叩かれた。
M「分かったやろ?とにかく早くここから離れようや。しばらくは意識しっかり保ってくれぐれも安全運転でな」
バイクを発車させてからずっとハンドルを握ってる腕がガクガクしながら乗っていたのが、滝から10㎞ほど離れたあたりで全身の悪寒がピタッと止まり気分が凄い楽になった。後ろに座るMさんに「もう大丈夫です」と声を掛け、ほどなくしてコンビニで休憩した。
Mさんいわく、滝(山)の入口に着いた時点でそれ以上はどうしても足を踏み入れたくなかったんだそう。俺の場合は全く霊感が無いので大丈夫だろうと。なにより楽しみにしていたツーリングの途中でそんね霊的な話しで気分を盛り下げるのが可哀想で止めなかったのだと。自分としては是非とも止めてほしかったが…ww
Mさんは「見える」というより「感じる」らしく、俺が山から出てきた時にも『なにか』の姿までは見えないが『なにか』の存在感(?)みたいなものはずっと感じていたので一刻も早く離れようと提案してきたらしいです。ある一定の距離を置いて悪寒が無くなったのは「よく分からんけど諦めたンじゃないの?」と話していた。そりゃまァ必死に訴えかけられても見えも聞こえも触れもしなけりゃ誰だって諦めるンでしょうね。
ツーリング自体はそのまま決行しました。滝のせいで時間がズレてルートは変更せざるを得ませんでしたが、Mさんも自分も無事故無違反で家路に着きました。
後日談。
手動で撮影した滝の写真は全てピンボケで「あぁ、滝だね」ぐらいしか分からないものばかりでした。突然たかれたフラッシュは撮影はされておらず本当にただフラッシュのみだったようです。
そしてセルフタイマーで撮った2枚の写真。1枚目のほうは滝の写真としては悪くなかったンですが、滝をバックにして立っている自分の首がありませんでした。
2枚目の写真は首もあり、滝そのものは見事に撮れていたのでブログやSNSなどにツーリング写真の一つとして投稿。後日事情を知らない友人から「これって滝の所に人いるの?」というコメントが来ました。写真を確認している時は全く気付かなかったのですが、自分が立っている後ろ(平面の写真上だと自分の右側)に滝、という構図で、その流れ落ちる滝が人の形をしてました。
ゾッとしました。そのセルフタイマーで撮影した2枚の写真の他、滝を映した写真全てデジカメ、PC、SNSから削除しました。一応その滝をウェブで検索してみたところ、一発目から『心霊スポット』と出てきました。
その日から周りで心霊現象…は何も起きてません。写真で消えていた頭部も怪我や病気など何も無く無事です。
他の投稿にあるような「髪の長い女が…」みたいなものではありませんが、自分が経験した中では最も怖いゾッとした体験でした。
ここまで長々と読んで頂いた方、ありがとうございました。
ライダーさん、投稿ありがとうございました
そして翌日、自分が運転。先輩が後ろのシートに乗りツーリング出発。天気も良く、いくつか決めたルートも段取り良く回り、いよいよ見所の滝へ向かうぞ~とテンション高めでバイクを飛ばして行きます。
さてこの滝なのですが、関西の南のほうに位置する滝で、人手が少なく落差もかなりの高さがあり、更に滝壺の裏に回る事が出来て、流れ落ちる見事な滝を裏側から見れるというものでした。しかも観光案内の雑誌に載ってるぐらいなので期待出来るだろうと。
しばらく走っていると『○○滝↑』という古ぼけた小さい立て看板が出てきたのでその看板に従い走っていると、地図には載ってない細い山道にどんどん入っていく。上り下りが激しくなり、道も車じゃ通れないほど細く荒れた道になっていた。
本当にこっちで合ってんのか?という不安を抱えたまま結構長い時間バイクを走らせ、ようやくその滝の入口らしき場所に到着した。雑誌に載っていたほどなので最低限の駐車場的スペースを期待していたが、駐車場どころかバイク一台止めるスペースすらも無かったので、仕方なく山肌に立て掛けるような感じでなんとか止めました。
バイクは止めたもののまともな案内看板などは無く、山中への入口(?)からは滝は全く見えず、滝の流れる音すらも全く聞こえませんでした。しかし通って来た道にもそれらしい入口も無かったので多分ここだろうと。とりあえず一服して(ちゃんと携帯灰皿は持ってます)さァ山に入ろうか、としたところで急に先輩のMさんが渋りだす。
M「俺はここでいいや。○○一人で行っておいでや」
俺「いやいや、なんでなんスか。せっかくここまで道なき道を走って来て滝は目前やのに」
M「いや…まァ…滝まで遠そうやし、体力無いからこの山道を歩いて行くのはしんどいわ。ここでのんびりしとくから○○行って来な。あとで写真見せてもらえたら俺はそれで十分やから」
俺「…分かりました。ほんなら僕一人で行って来ますわ!写真見てからやっぱり見に行けば良かったァ~って思っても知らないっスよ!」
そんな感じのやり取りをして自分一人で滝まで行く事に。
山道へ入り5~6分ほど歩いてもまだ滝の音すら聞こえず、最初は歩きやすかった道も奥へ進むに連れてどんどん歩きにくくなり、バイク用のブーツだとかなり厳しくなってきた。そして、滝へ近付くに連れて段々と心細いような、不安な気分になりました。まァさっきまでMさんと一緒にいたのに急に一人っきりになったからだろうな~なんて思いながら歩を進め、大体10分ほど歩いたところで滝の音が聞こえ、大きな滝が姿をあらわしました。
雑誌に載っていた通り凄く立派な滝で、実際に目の当たりにすると言葉を失うほどでした。しかしそんな感動的な気持ちとは裏腹に「早く戻りたい」という感覚がありました。普段なら滝を眺めながら一服してしばらくのんびりするンですけど、この時ばかりは何故かそんな気分には全くならない。元々一人っ子で一人でいるのは慣れてるし寂しいとも思わないハズの自分が、早くMさんのいる場所に戻りたいと思っていました。
「ここまで来て一人でいるのが心細いなんて情けないこと言うてられるか!せめて滝の綺麗な写真は撮らんとな!せっかくやから滝の裏側も見ておかんともったいない!」と、自分に言い聞かせて、持っていたデジカメで何枚か滝の写真を撮影。しかし何枚撮ってもピントが合わず、全てピンボケの写真ばかり。
この辺りから「もうここには居ないほうがいい。写真も撮らないほうがいい」と思い始めたのだが、せっかく来たのに…という悔しさが勝り、半ば意地になってもっと綺麗ないい写真を撮ろうと少し場所を移動。
滝の真ん前から少し左側にボロボロの梯子が立て掛けてあり、滝の裏へ行けるようになっていた。その梯子を上って左斜めの角度から滝を撮ろうと梯子に手をかけた時、なんとも言えない空気が流れました。自分は霊感が全く無いので上手く表現は出来ませんが、とにかく進みたくない重たい空気。
霊感が無いせいか、危ないとか怖いとかの感覚が無く、自分としてはこのワケの分からない感覚が何なのか分からず、躊躇いながらも梯子を上りました。
梯子を上ると多少の広さの空間があり、清掃されていない泥や蔦だらけの木のベンチが一つ。そして、梯子を上る前よりも更に澱んだ重たい空気。それは滝の裏へ近付くほどに重さを増すような感じで、あまりの異様な空気にそれ以上は全く進めず、そこで写真を撮ったらすぐ戻る事にしました。
デジカメの電源を入れて滝に向かってシャッターを切ると、テレビの心霊番組でやってるのと同じようにいきなり電源が切れました。何をどうしても電源が入らず、一度バッテリーを抜いてから再度電源を入れて撮影開始するも手動ではシャッターが切れず、セルフタイマーで撮影を試みる事にしました。
泥や蔦などで汚れたベンチの多少綺麗な場所にデジカメをセットしてセルフタイマーを作動させ、自分は滝を背にした状態でデジカメのほうを向く。そして時間が来たらタイマーで自動撮影。上手く撮れていないとマズいと、念の為もう一枚同じ手順でタイマー撮影。
写真を撮り終え、撮った写真がどんなものか確認しようとデジカメを手にするとまたもや電源が切れました。ここまで連続して怪現象が起きるとさすがに怖くなり、もう写真確認どころじゃないとその場を立ち去ろうとした時、
『パシャッ!』
…と、操作もしていない、ましてや電源の切れたデジカメのフラッシュが急にたかれたかと思うと、耳の裏から背中にかけて今まで感じた事の無い凄い悪寒。一瞬にして全身に鳥肌が立つのが分かり、血の気が引くほどゾクッとしました。その悪寒と同時に、ベッタリと張り付くような感じの視線を背中の1m後ろぐらいに感じました。
怖い話の中でよくある「視線を感じる」という表現を、いつも「視線なんてそんなに分かるか?w」と小馬鹿にして読んでましたが、実際に自分が体験するとこれほどまでに分かるものかと痛感。肌や感覚で分かるほどの視線というのは、重さと粘り気のある見えない空気に触られてるような気持ちの悪い感覚と寒気でした。
「いやいや、これはアカン。ホンマにアカンやつや。心細いとかじゃない別の違和感を感じた時点で戻れば良かった…」
自分は霊感なんて無いです。姿を見た事も無ければ音や声を聞いた事すら無い。それでも、今この場で振り向いたら確実に『なにか』を見るだろうと思い、自分の戻るべき道だけを見ながら進みました。この時点でもう半泣き。
上って来た梯子を下りる時は、梯子を下りる自分を上から『なにか』が見ている感覚が常にあり、とにかく足を踏み外さないよう、そして絶対に上を見ないよう慎重に降りました。
そのまま来た道を戻るのですが、何故か自分の頭の中には「急いだら転ばされる」という感覚(?)がありました。Mさんとバイクの待つ山の入口までは徒歩で10分。もし怪我でもして歩けなくなれば助けも呼べない。自分がこの場に残る羽目になると、恐らくその『なにか』の思うツボだと思い、足下をしっかり確認しながら決して急がず焦らず、そして絶対に振り向かないように何も考えず来た道を戻りました。
しばらく無心のまま歩き続け、ようやく入って来た山の入口が見え、小さくMさんの姿と自分のバイクが見えました。すぐにでも駆け寄りたかったンですが、ここで無駄にMさんを怖がらせても仕方ないなと思い、精一杯平常心を保ちゆっくりと山を抜けました。
M「遅かったな。どうやった?」
俺「いやァ~、メチャクチャ良かったっスよ!やっぱ雑誌で見るのと実際に自分の目で見るのとはちゃいますね!」
M「そっかそっか。ほな出発しようや」
俺「えっ?ちょっとぐらい話し聞いて下さいよ。一服もしたいし」
M「うん、あとで聞くわ。とりあえずこの場所から離れようや。○○がどうしても滝が見たいって言ったから我慢してたけど、俺この場所は嫌や。今は○○だってそうやろ?」
俺「俺っスか?いや別に…涼しくて気持ちいいなァ~ぐらいですけど…」
M「いや、もう嘘つかんでエェよ。よっぽど怖い思いしたんやろ。必死に平常心保とうとしてるけどさっきからメッチャ声震えてるし、なによりな、○○が山から出てきた時の顔色が尋常じゃなく真っ青やった。今も青冷めてるで。ミラーで見てみ?」
Mさんに言われるがままバイクのミラーで自分の顔を見た。これが本当に自分なのかと思うほど血の気が無く真っ青になり、自分の顔にも関わらず、ミラーに映る顔は生きてる人間の顔じゃないように思えた。その瞬間、全身が痙攣するほど激しい悪寒に襲われ、またこの悪寒とほぼ同時にMさんに強く背中を叩かれた。
M「分かったやろ?とにかく早くここから離れようや。しばらくは意識しっかり保ってくれぐれも安全運転でな」
バイクを発車させてからずっとハンドルを握ってる腕がガクガクしながら乗っていたのが、滝から10㎞ほど離れたあたりで全身の悪寒がピタッと止まり気分が凄い楽になった。後ろに座るMさんに「もう大丈夫です」と声を掛け、ほどなくしてコンビニで休憩した。
Mさんいわく、滝(山)の入口に着いた時点でそれ以上はどうしても足を踏み入れたくなかったんだそう。俺の場合は全く霊感が無いので大丈夫だろうと。なにより楽しみにしていたツーリングの途中でそんね霊的な話しで気分を盛り下げるのが可哀想で止めなかったのだと。自分としては是非とも止めてほしかったが…ww
Mさんは「見える」というより「感じる」らしく、俺が山から出てきた時にも『なにか』の姿までは見えないが『なにか』の存在感(?)みたいなものはずっと感じていたので一刻も早く離れようと提案してきたらしいです。ある一定の距離を置いて悪寒が無くなったのは「よく分からんけど諦めたンじゃないの?」と話していた。そりゃまァ必死に訴えかけられても見えも聞こえも触れもしなけりゃ誰だって諦めるンでしょうね。
ツーリング自体はそのまま決行しました。滝のせいで時間がズレてルートは変更せざるを得ませんでしたが、Mさんも自分も無事故無違反で家路に着きました。
後日談。
手動で撮影した滝の写真は全てピンボケで「あぁ、滝だね」ぐらいしか分からないものばかりでした。突然たかれたフラッシュは撮影はされておらず本当にただフラッシュのみだったようです。
そしてセルフタイマーで撮った2枚の写真。1枚目のほうは滝の写真としては悪くなかったンですが、滝をバックにして立っている自分の首がありませんでした。
2枚目の写真は首もあり、滝そのものは見事に撮れていたのでブログやSNSなどにツーリング写真の一つとして投稿。後日事情を知らない友人から「これって滝の所に人いるの?」というコメントが来ました。写真を確認している時は全く気付かなかったのですが、自分が立っている後ろ(平面の写真上だと自分の右側)に滝、という構図で、その流れ落ちる滝が人の形をしてました。
ゾッとしました。そのセルフタイマーで撮影した2枚の写真の他、滝を映した写真全てデジカメ、PC、SNSから削除しました。一応その滝をウェブで検索してみたところ、一発目から『心霊スポット』と出てきました。
その日から周りで心霊現象…は何も起きてません。写真で消えていた頭部も怪我や病気など何も無く無事です。
他の投稿にあるような「髪の長い女が…」みたいなものではありませんが、自分が経験した中では最も怖いゾッとした体験でした。
ここまで長々と読んで頂いた方、ありがとうございました。
ライダーさん、投稿ありがとうございました
【百物語 第六十三話】十字路
夏の話
通ってた高校の近辺に見晴らしが良い場所なのに毎日のように事故が多発していた十字路がありました。
歩行者が巻き込まれるようなのは無いけど、どれも車同士がぶつかるといったものばかり。奇跡的に亡くなった人はおらず、その原因をなんとなく私は見ていた。
そこは通学路なので、自転車でその横断歩道を渡る時必ず下を見て通る。
白いワンピースで広い帽子を被った女の人がその十字路の電信柱に立っているのを知っていたからだった。赤信号で待っている間 電柱に立っている彼女と隣同士になってしまう時もあったけど、(よくある怖い思いをするパターンになりたくなかったから)けして隣を見なかった。
基本その女の人はただ立ってるだけで、立ってる場所は違う時もあるけどずっと車を見てるだけでした。
ある日従姉妹が帰宅中に事故に遇い、幸い怪我は無かったが車はベコベコ修理コースだった。そんな電話を受けたお母さんが「どこで事故やったの?」と訊くとあの十字路だった。
お母さんは事故った車を清めに向かい、私も暇だったので付いて行きました。
日本酒と塩で車を清め、軽く従姉妹を祓い、「暫くはあの道は使わない方がいい」と従姉妹に言いました。
私はあの女の人の事をはっきりとは言っていなかったのですが、その帰りに「なんで事故ったんだろね?」と訊いてみました。
お母さんは運転しながら淡々と答えました。
「あそこ事故多いでしょ?
今ぐらいの季節になると毎年あそこにね、白いワンピースの広い帽子を被った女の子がいるのよ。
友達と彼氏と4人でドライブか何かしてて事故に遭ってその子だけ死んだみたい…
その友達と彼氏を探してるんだけど、でもあの子はあの場所から離れられないからね…引っ張るんだよ。
今回は従姉妹ちゃんも引っ張られちゃったけど、あんたも気を付けるんだよ」
夏休み明けには彼女はいなくなり、
事故も起こらなくなりました。
でも毎年夏になると彼女は今でも立っています。
白いワンピースで広い帽子を被った女の人がその十字路の電信柱に立っているのを知っていたからだった。赤信号で待っている間 電柱に立っている彼女と隣同士になってしまう時もあったけど、(よくある怖い思いをするパターンになりたくなかったから)けして隣を見なかった。
基本その女の人はただ立ってるだけで、立ってる場所は違う時もあるけどずっと車を見てるだけでした。
ある日従姉妹が帰宅中に事故に遇い、幸い怪我は無かったが車はベコベコ修理コースだった。そんな電話を受けたお母さんが「どこで事故やったの?」と訊くとあの十字路だった。
お母さんは事故った車を清めに向かい、私も暇だったので付いて行きました。
日本酒と塩で車を清め、軽く従姉妹を祓い、「暫くはあの道は使わない方がいい」と従姉妹に言いました。
私はあの女の人の事をはっきりとは言っていなかったのですが、その帰りに「なんで事故ったんだろね?」と訊いてみました。
お母さんは運転しながら淡々と答えました。
「あそこ事故多いでしょ?
今ぐらいの季節になると毎年あそこにね、白いワンピースの広い帽子を被った女の子がいるのよ。
友達と彼氏と4人でドライブか何かしてて事故に遭ってその子だけ死んだみたい…
その友達と彼氏を探してるんだけど、でもあの子はあの場所から離れられないからね…引っ張るんだよ。
今回は従姉妹ちゃんも引っ張られちゃったけど、あんたも気を付けるんだよ」
夏休み明けには彼女はいなくなり、
事故も起こらなくなりました。
でも毎年夏になると彼女は今でも立っています。
G県出身さん、投稿ありがとうございました