【百物語 第四十五話】彼の名はアニー : てら…こわす。~怖い話まとめちゃんねる~
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【百物語 第四十五話】彼の名はアニー


「気は優しくて力持ち!彼の名はアニー」

亡くなった祖母から、何度も何度も聞いた体験談を。
寺生まれ寺育ちの祖母。
まだ彼女が小さい頃実家のお寺には、修行中の小坊主さんや、丁稚奉公人の人達、檀家の人達等々、いつも家族以外の人が居るのが、当たり前の状況だったそうです。

その中に、隣町から丁稚奉公に来て居た少年が居ました。
彼は「アニー」と呼ばれていたそうです。
勿論本名ではなかったそうですが、彼自身が人に挨拶をする時に、求められずとも、「オラの名はアニーだす!仲良しばください!(仲良くして下さい)」と必ず言うらしく、それで周りの人達は彼をアニーと呼んでいたそうです。

彼は、掃除やら薪割りやら様々な雑務を、担っていたそうです。
彼がお寺にやって来た切っ掛けは、当時そこそこ位の高い僧侶であった、祖母の父親(私にとって曾祖父)に、彼のご両親が相談に来た事でした。

(※生々しく嫌な表現になるやも知れません。又、会話部分は祖母が話してた事を記憶にある限り思い出して書いています。多少の違いはあるにしろ、意味合いに差違はありません。方言や訛りや、各人物特有の言葉使いになっている為、読み難い部分もあるでしょうがご勘弁下さい。)

彼は少し知能に遅れがあり、それ以外に彼特有の、ある特異な体質を持っていたそうです。
親御さんは曾祖父に「どうか息子に憑いた牛の化け物を祓って欲しい。息子を助けて欲しい。」という相談をした様です。
と言うのも、彼は所謂反芻動物の様に、再咀嚼を行いながら、食事をするそうなのです。
つまり通常人間が食事をする時、食物を口に含む→噛む→飲み込むですが、反芻動物は、一度噛み砕いて飲み込んだ食物を口の中に戻して(嘔吐とはまた違うらしい?)、それをまた噛み砕く→飲み込む、を何度か繰り返します。

彼は小さい時より、固形物を食べる頃には、何故か牛のそれの様に食事を取っていたらしく、親御さんは心配で仕方なかったらしいのです。

しかし病院に連れて行っても、原因が解らず終いだったそうです。
祖母に言わせれば、昭和初期の時代の話と言う事と、彼の出身地区は当時かなり田舎だったそうで、大きな病院等なく、ましてや時代が時代な為、医療の発展はそれ程目覚ましくなかった為、きちんと調べる設備すら、田舎町の診療所レベルの個人医院には無かったと思うと言っていました。

そういう状況の中、息子を案ずるご両親が、藁にもすがる思いで頼ったのが、知り合いの霊媒師的人物だったそうです。
その人物は、彼にはかなり悪質な、牛の霊が憑いて居るが、自分では祓ってあげられないと言ったそうだ。

ご両親には思い当たる節があった様で、彼の一家が住んで居た近所に、牛飼い(多分今で言う酪農家)のお宅があり、彼がまだお腹の中に居たある日、その牛飼いの敷地から、飼って居る古株の年老いた雄牛が、逃げ出したそうです。
彼のお宅近辺に逃げ込んだ時、たまたま外に出ようと、玄関の引き戸を開けて外に一歩出た状態の妊娠中のお母さんに、驚いた雄牛が突進したらしいのです。
お母さんは咄嗟に、お腹を庇う体制で転んで、その後玄関に転がる様に入り、引き戸を閉めて牛から逃げたそうです。
そこに、お母さんの悲鳴や牛の鳴き声や物音を、聞き付けてやって来た彼のお父さんは、お腹を庇い苦しむお母さんに状況を聞いたそうです。
お産婆さんを呼ぼうにも、雄牛が邪魔をする様に鎮座。
怒りに震えたお父さんは、命の危険を省みず、斧を片手に雄牛に掛かって行ったそうだ。
向かって来た雄牛を相手に、ぶつかる寸前に横に退きつつ、斧を振りかざした時、それが牛の脳天を捕らえたそうだ。
それからは、暴れるものの、焦点が合わないのか、お父さんが優位な状態になり、集まって来たご近所の人達の加勢も加わった事もあり、雄牛を仕留めたそうです。

その後、お産婆さんを連れて家に帰ると、お母さんが産気ついていた様で、かなり危ない状況の中、お母さんは彼を産み落としたそうです。
その時は、何とか難を逃れたと思っていたそうだが、彼が大きくなるにつれ、他の兄姉達の時とは違う何か違和感を、抱き始めたそうです。
それでも、あんな事故に見舞われたのだから、無事に生まれてくれただけで、良しとしなきゃいけないと、ご両親共々自分達に言い聞かせながら、彼を精一杯愛し育てたそうです。

しかし、知能の遅れや、独特の食事の仕方を、密かに周りが好奇の目で見ている事を、感じる様になり、彼の兄弟達は彼の事で、からかわれたり、イジメにあったりもしたそうで、ご両親は彼自身への心配と、兄弟達の苦悩とで、何とかせねばと子供達を案じて、過ごしていたそうです。

方々手を尽くしても何も出来ず、困り果てた親御さん達が、最後に辿り付いたのが、曾祖父の所だったと言う事です。
曾祖父が、彼を視た時、確かに彼の背後には、強い念をまとった雄牛がいたそうです。
しかし、雄牛からは憎悪や邪念は感じず、むしろまるで同志を案ずる様な思念を感じたそうです。
それよりも、問題なのは雄牛以外の沢山の霊体達でした。

そう、彼の後ろには、最早何体居るかも解らぬ程の、無数の霊体が憑いていたそうで、様々な人達を視て来た曾祖父も、見た事が無い程の状態に驚愕したそうです。

そして何とか彼を救おうと、色々策を練っていた時に、ある事に気が付いたそうです。
これは決して完全には祓い切れない、誰の力を以てしても。
その霊の集合体が、あまりにも強靭だからとかでは無く、もっと致命的な理由があったそうです。

それは彼自らが、全て覚悟の上で、数多の霊体を抱え込んでいる状態だったからだそうです。
さまよう無数の霊体に手を差し伸べ、共に生きようとしている状況だったそうです。
この状態を見ても解る様に、アニーは知能に遅れもあり、特異な体質を持ち、体格も人並み外れた大きさで、初めて見る人が身構えてしまう事もあった様ですが、その実、誰よりも優しく、澄んだ心を持ち、真面目で兎に角何事にも一生懸命な青年だったそうです。
あまりにも優し過ぎる故、邪気等皆無な彼は、悪意や邪気を持つ霊体にも、手を差し伸べてしまっていた。
本人がそれらの霊体と闘う意志を微塵も持たない状況で、それだけの霊体を完全に祓い切る事は不可能なんだそうです。
例えば何体か祓っても、間髪入れずにまた次々に、手を差し伸べてしまう。
その繰り返しになる事が解るだけに、曾祖父は彼に解る様に何日も何日も、必死に説明して聞かせたそうですが、彼は決まってこう言うそうです。
「みんなひとりぽっちり(一人ぼっちの事?)、みんなひでー(苦しい?)、みんな泣いでる、かわいそだす。」
それでも、曾祖父は説得しますが、
「オラはバカだも(だけど)力持ぢだす、心配ねだす」
と彼はちょっと悲しそうに笑うのだそうです。

彼の魂の徳の高さに、感銘を受けた曾祖父は何としてでも彼を救いたいと思ったそうです。
これ以上荷物を持ったらいくら力持ちでも、潰されて死んでしまうんだと、いつしか止まらない涙を拭う事も忘れ、必死に説得し続けたそうです。
しかし彼の覚悟が揺るぐ事は無く、逆に曾祖父を諭すかの様に語り始めたそうです。
「オラあん時、お母ちゃんの腹ん中で死んだんだす。ベゴさん(牛)オラば、お母ちゃんの腹ん中に帰したんだす。オラには、お父ちゃんがけた(くれた)名があるだす。だも(でも)、ベゴさんにも名があっただす。ベゴさんの名は兄い(アニー)だす。オラばすけで(助けて)ベゴさんは、帰れんがっただす。
オラは、うんとかせがねとねーだす(働かないと?頑張らないと?いけない)うんとすけでけねーど(助けてあげないといけない)だす。」
曾祖父は、彼がもう二度と覚悟を変えるつもりはない事を、悟ったそうです。
ご両親にもその旨を説明し、彼が本当に危機的な状況になった際には、すぐ何らかの手をうつ事を約束し、お寺で住み込みながら働く事の了承を得たそうです。
何かあった時場所的にも適していた事もあり、ご両親も彼を預ける決心をしたそうです。
そうして、お寺に彼こと…アニーはやって来ました。

そこから幾年月…
アニーと祖母家族との不思議な物語が生まれますが、それはまた別の機会に、お話させて頂けたら幸いです。

長々と失礼致しました<(_ _*)>



あきさん、投稿ありがとうございました

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この記事へのコメント

  1. 怖い名無しさん 2014年06月10日 23:13:07

    続き希望!!読みたい!!
  2. 怖い名無しさん 2014年06月10日 23:40:32

    訛りが東北地方だね。続きが気になるよ
  3. 怖い名無しさん 2014年06月11日 00:04:58

    続きをお待ちしておりやんす。
  4. 怖い名無しさん 2014年06月11日 12:02:28

    爽やかな少年で好感が持てるなー。続きが気になります。
  5. 隙間風 2014年06月11日 18:25:03

    傲慢で強欲でとっても優しい人だと思います

    不幸な結末でないことを願います
  6. 怖い名無しさん 2014年06月11日 21:46:58

    シリーズ化って...
    グリーンマイルのアレンジ?
  7. 怖い名無しさん 2014年06月14日 18:32:56

    何故アニー?
  8. 怖い名無しさん 2014年06月14日 20:23:34

    文中にあったろ?
    >オラには、お父ちゃんがけた(くれた)名があるだす。だも(でも)、ベゴさんにも名があっただす。ベゴさんの名は兄い(アニー)だす。オラばすけで(助けて)ベゴさんは、帰れんがっただす。
  9. 怖い名無しさん 2014年06月15日 22:12:00

    これはもしや「ウシマツ系」のお話?
    語ることがタブーっぽくて詳しい内容は聞いたことがないので
    早く続きが読みたいです
  10. あき 2014年06月19日 00:11:01

    コメントをくれた皆様本当にありがとうございます<(_ _*)>
    コメント9さんの言う類いのお話なのかどうか
    実は私自身解らないのです
    飽くまで
    祖母から聞いた「お寺ばなし(我が家では祖母の幼少期の思い出話をこう呼んでました)」の一つなので…無知ですいません<(_ _*)>
    ただ生々しく
    差別用語になりますが
    彼を「牛のあいのこ」と卑下する呼び方をする方達もいたそうです
    親御さんにしたら堪らなかったでしょうね…
    そしてグリーンマイルのアレンジ?とのコメントに思わず納得です
    何故なら実生活で友人や知人にこのお話をすると
    実に半分ぐらいは彼をグリーンマイルのあの登場人物で想像してしまったと言われるんです
    だけど実は私
    彼を見た事があります
    祖母や祖母のお姉さんが持っていた写真でですが
    今の写真の様にくっきりとした写りではありませんでしたが
    彼はTHE日本人顔でした(笑)
    写真で見ても解りましたが
    当時の日本人にしてはかなり大柄だったと思います
    本当に優しい笑顔の青年でしたよ
    最後にあの写真を見たは数年前ですが

    あの笑顔は今でも脳裏にくっきりと焼き付いています

    もし許されるのならば時間がある時に
    他のお話も投稿させて頂けたら幸いです
    管理人さん
    かなりの長文を「百物語」のお仲間に加えて頂きありがとうございました<(_ _*)>

     
  11. 怖い名無しさん 2014年07月10日 03:04:29

    不思議な話だねぇ
  12. 怖い名無しさん 2014年09月27日 21:44:33

    いい人だ(*´`*)
  13. 怖い名無しさん 2014年11月14日 09:50:37

    しかし何故だ?、何故牛なんだ
  14. 怖い名無しさん 2015年04月28日 21:06:48

    既に仏の域に達しているんだね
  15. 怖い名無しさん 2015年05月25日 05:23:32

    アニーの父ちゃん、マタドール・・・
  16. チーム大谷 2017年07月09日 10:52:48

    マタドールと言えば、丸山可鈴さんが良く行ってた店


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