【祟られ屋シリーズ第14話】 黒い御守り : てら…こわす。~怖い話まとめちゃんねる~
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【祟られ屋シリーズ第14話】 黒い御守り

前回の話を読む

俺は、金融業を営むオム氏から、大学生の娘さんのガードを依頼された。

最近、オム家の庭に猫の生首が放り込まれたり、
家の壁に『ひとごろし』と落書きがされていると言う事だった。
商売柄、オム氏は人の恨みを買い易い。
以前、悪質なストーカー被害に遭った事の有る長女は怯え切っており、
家から足を踏み出せない状態に陥っていた。
それだけなら、まあ、よくある話だし、俺にお鉢の廻ってくる話でもなかった。

オム夫人は、最初に猫の首が放り込まれる数ヶ月前から、
毎晩のように悪夢に魘されていた。
見知らぬ男に娘が刃物でバラバラに切り刻まれる夢だったらしい。
なんとか娘を助けようとするのだが、夫人は全く身動きが取れず、
成す術も無く愛娘がバラバラに解体されて行く様子を見せつけられるのだ。
『・・・ただの夢だ』、そう思ってオム夫人は夫にも『夢』の話はしていなかった。
だが、ストレスからだろう、体重が7kgほど落ち、貧血で倒れたりするようになった。

悪夢は続き、そのまま新年を迎えた。

オム夫人は新年のバスツアーに参加して、
初詣で訪れた関東のある寺で気になることを言われた。
参拝客を相手に赤い着物を着た占い師が占いをしていたらしい。
娘が占って欲しいと言い、オム氏が金を出して占いが始まった。
占いは15分ほどで終わり、3人はその場を立ち去ろうとした。
去り際に占い師が声を潜めて夫人にだけ聞こえるように言った。

「奥さん、長い間水子の供養をしていませんね。
 山門の前でお守りを売っているから、
 売り子の中で一番若い男性からお守りを買いなさい。
 買ったお守りは身に付けて、1年間、絶対に手放さないように」

オム夫人は、『水子』と言う言葉に一瞬ドキッとした。
まあ、中年の女性に『水子』という言葉を投げかければ、
結構な確率で思い当たる人はいるだろう。
こういう場所だから、的屋や露天商同士で客の融通でもしているのだろう・・・
そんな風にあまり気にはしていなかったそうだ。
境内は物凄い人だかりで規制が行われていた。
観光バスの集合時間もあるので、護摩を郵送で頼み、
本堂で賽銭を投げると、そのまま階段を下った。
本堂を出て階段を下りると後戻りできない。
山門の手前で夫人はオム氏に「お父さん、お守りを買って行こう」と言って、
大きな人だかりの出来た露店に足を向けた。

露店には8人ほどの売り子がいた。
どの店員も中年以上で、半分は老人といって良い年代だった。
一番端の男だけ20代後半から30代半ばといった年恰好だった。
先ほどの占い師と同じくらいか・・・女占い師のオトコか何かか?

「お守りを頂けるかしら」

「持つ方の干支は?判らなければ何年生まれかでも結構です」

男がゾッとするような、射すくめるような鋭い視線を向けた。
『何なの、この人?』
3人分の干支を伝えると、男は黒い札を3枚選び出し、
目の前に置かれた守り袋の中に入れた。
色とりどりの袋があり、他の客は好きな物を選んでいたが、
男はどれにするかも聞かず赤い袋を選んだ。
お守りを入れた包装用?の紙袋には、
中身の干支がペンでそれぞれに書き込まれていた。
オム夫人は完全に気分を害していた。
『ふざけた店員ね、頭にくるわ!』
娘と夫が買ったものと一緒に会計を済ませると、3人は山門を出た。
仲見世で土産の葛餅を買うと、駐車場に向った。

次の目的地の中華街へ向うバスの中で、先ほど買った御守りを検めると、
一つ余分なものが入っていた。
袋には、同じペンの似た筆跡で『昭和XX年・Y年』と書いてある。
他の客の物が混ざったのだろうか?
払った代金には過不足は無かったので『後で処分すれば良いわ』と、
余分な御守りの事は忘れる事にした。

ツアーが終わり、オム一家は逗留していた親戚宅を後にした。
地元に戻って暫くは平穏な日々が続いた。
お参りの効果があったのか、あれほど悩まされた悪夢もピタリと見なくなった。
やれやれと思って部屋を掃除していると、
初詣の時、『間違って入っていた』御守りが出てきた。
紙袋の中を見ると『悪趣味な』黒い御守り袋が出てきた。
御守りを見ると、あの『頭にくる店員』のことが思い出された。
『他人のお守りを持っていても仕方がないわ』そう思って、
オム夫人は黒い御守り袋をゴミと一緒に捨てた。


やがて2月に入った。
節分が過ぎた週だった。
オム夫人は再び『悪夢』に襲われ始めた。
以前より鮮明な悪夢だった。
娘を助けようとするのだが、何かに足を固定されていて動けない。
そして、風呂に入っていて気付いた。
足に覚えのない痣が出来ている。
痣は日に日に濃くなって行った。
不安になったオム夫人は、痣と夢の事をオム氏に話した。
オム氏は「痣はどこかにぶつけたんだろ?後になって青くなる事もあるし・・・
お互い若くはないからな。夢は夢だよ、気にするな。
気にするから何度も同じ夢を見るんだよ」そう言って、
あまり真剣には取り合わなかった。
だが、猫の生首が庭に放り込まれるとオム氏の態度は一変した。

自営業者には、『縁起を担ぐ』者が多く、人の恨みを買っている自覚からか、
祟りや呪いと言った話に敏感な人がかなりいる。
キムさんは、そう言った自営業者の中では知られた存在だ。
オム氏は人を介して、キムさんに面会した。

キムさんは「どんなに都合の悪い話でも、思い当たる事は全て、
包み隠さずに話して欲しい」
とオム夫妻に言った。
オム夫人は占いや御守りの話も含めて、全てを話した。
オム夫人は、若い頃、堕胎の経験があった。
オム氏と出会う以前の話で、オム氏の知らなかった事実だった。

「捨てた『黒い御守り』がポイントだったな・・・・・・
その占い師と店員、只者ではないだろう。まずはその二人に当たってみよう」


キムさんは問題の寺を訪れた。
寺は閑散としていて、予想はしていたが問題の占い師も店員も・・・
御守りを売っていたという露店さえも無かった。
キムさんは、受付の人に聞いてみた。
当然、判らないという返事が返ってきた。
ただ、正月の露天商の仕切りは、檀家総代もしている人物がやっているらしい。
娘婿が寺の職員をしているから呼んでみようと言ってくれたそうだ。

キムさんは総代という人物に会って、問題の店員の事を聞いてみた。
個人のプライバシーに関わる事なので教える事は出来ないと言う答えだった。
売り子の店員は、近所の老人と地方からの出稼ぎの人達で、
年末から2月半ばまで働いているということだった。
問題の『若い店員』の名前などは教えて貰えなかったが、
3月の震災で津波に襲われた地域から来ている人らしい。
安否の確認は取れていないという事だった。
占い師の女性は『管轄外』という事だったが、
占いの元締めに金を払って店を開いているか、
元締めの元で修行中の占い師の卵だろうという事だった。
占い師の元締めに、それらしき女占い師を尋ねたが、
やはり、連絡先や消息は判らないという事だった。
そうなると、猫の生首を放り込んでいる人物を直接捕まえるしかない。
もちろん、その人物が呪詛を仕掛けているとは限らないが、
思い当たる要素を潰して行くしかなかった。

キムさんはオム夫人を水子供養で実績の有る霊能者に紹介した。
その霊能者は、気になる事を言った。
オム夫人に水子の霊は憑いていない。が、強烈な恨みの念が纏わり憑いてる。
物凄く強い念らしいが、肝心の念の主が見えない。
ただ、悪霊の類ではなく、生きた人間のものである事は間違いないだろう、
という事だった。


俺は、キムさんの命を請け、オム氏との間で、
娘さんを24時間体制でガードする契約を結んだ。
猫の生首を放り込んでいた犯人は予想よりも早く捕まった。
驚いた事に、犯人は男子小学生だった。
小学生がそんな残虐な真似をした事実に驚きはしたが、正直、拍子抜けした。
『ひとごろし』の落書きの犯人も彼だった。
また振り出しか・・・。

とりあえず、保護者に連絡して、
今後このような事をさせないように注意させる必要があった。
俺達は、オム氏宅に少年の両親を呼び出した。
少年の両親は菓子折りを持って姿を現した。
だが、少年の父親とオム夫人の目が合った瞬間、二人は凍りついた。
俺は『・・・何だ?』と怪訝におもった。
どうやら、二人には面識が有るらしい。
とりあえず、少年の両親は、我が子の待つ居間へと通された。
オム氏が両親に息子が行った事を話して聞かせた。
オム氏の長女は俺の腕を掴みながら、恐怖の視線を少年に送っていた。
恐縮する少年の母親。
そして、激昂した父親が少年を張り飛ばした

「何て真似をしてくれたんだ!」

「子供相手に、止しなさい!」

オム氏が慌てて少年に駆け寄った。
オム夫人が青褪めた顔で少年に問いかけた。

「ボクは、なぜ、あんなことをしたの?」

ニヤリと嫌な笑みを見せながら少年は答えた。
「おばさんが・・・ううん『おかあさん』が人殺しだからだよ」

オム氏も少年の母親も狐につままれたような顔をしていた。
オム氏の娘は、得体の知れないものを見る目で少年を凝視している。
オム夫人と少年の父親の顔は青褪めていた。

「僕はバラバラに切り刻まれて殺されたんだ。おかあさんにね。
 怖くて、痛くて、寒くて・・・バラバラにされた僕はゴミバケツに捨てられたんだ。
 他の僕みたいな子達と一緒にね。
 そこのお姉さん、いや『妹』は可愛がって凄く大事にしているのにね」

オム氏が「どういう事だ」と語気を荒げた。
キムさんがオム夫人に言った。
「辛いかもしれないが、全てを話した方がいい。でなければ、何も解決しない」


オム夫人は話し始めた。
少年の父親は、オム夫人が中学生の頃、
家庭教師に来ていた大学生だったらしい。
高校受験が終わり卒業式後、入学式前の春休みの事だった。
オム夫人は少年の父親に誘われて、彼の部屋を訪れた。
そこで、大学生だった彼は15歳のオム夫人に襲い掛かった。
信頼していた相手に犯されて、茫然自失の彼女の裸身を
彼はポラロイドカメラで撮影した。
写真をネタに彼は何度も彼女を呼び出し、その身体を玩具にした。

やがて、彼女は妊娠した。
誰にも相談できず隠していたが、母親に露見した。
堕胎できるギリギリの日数だったらしい。
オム夫人の父親は激怒した。
だが、教師をしていた大学生の彼の父親は、組合の幹部で某政党に顔も効いた。
半ば、娘を人質に取る形で脅しを掛けてきた。
最低な連中だが、そんな過去を持つ男が今、
教師として教壇に立っていると聞いて、俺は反吐の出る思いがした。
彼の親が幾許かの慰謝料を払い、二度と彼を彼女に近付けない事、
写真を全て破棄する事が取り決められた。
代わりに、彼女の方は、今後一切の民事・刑事の法的措置を採らない事、
事件を口外しない事を約束させられた。

オム氏は妻の肩を抱きながら、怒りに充ちた視線を少年の父親に向けた。
少年の母親は、何か汚い物を見るような冷たい視線を夫に向けていた。
少年は、子供のものとは思えない冷たい視線を送りながら言った。

「お父さんはね、僕を殺した頃の『おかあさん』と同じくらいのお姉さんたちに、
お金を渡していやらしい事をしているんだ。今でもね」

父親に比べるとかなり若く見える、少年の母親の表情は凍り付いた。
思い当たる事があるのだろう。
あくまでも勘だが、彼女自身、この男の被害者だったのかもしれない。
少年は冷たい声で言った。

「『おかあさん』はね、もう長くは生きられない。
切り刻まれて死ぬんだ、僕がされたみたいにね」

オム氏の娘が少年に土下座して絶叫した。

「お願い、お母さんを助けてあげて」

「無理だよ」

「お前の『力』なんだろ?」
オム氏が歪んだ表情で言った。

「『僕たちの力』だ。もう、手遅れだよ」

・・・例の『黒い御守り』か・・・袋に書かれていた昭和XX年という年号は恐らく、
オム夫人が堕胎した年なのだろう。

俺は、少年に声を掛けた。

「『お前達』は、生まれる前の記憶を持っているのか?」

「まあね」

「お前も、他の子供達と『繋がっている』のか?」

「さあ、どうだろうね?でも、オジサンには判ってるんでしょ?
オジサン、僕を『怖いおばさん』の所に連れて行こうと思っているでしょ?
でもね、無理だよ。
オジサン達、古い大人たちには、僕らのことは判らない。
僕らには全て見えているけどね。
見えているから、見えない振りも、わからない振りも出来るんだ」

キムさんが「何のことだ?お前達は何を言っている?」と語気を荒げた。
次の瞬間だった。
キムさんの声を合図にしたかのように、
少年は突然、火が付いたように泣き出した。
周りの大人は、成す術も無く、おろおろとするだけだった。
小一時間も泣き続け、やがて少年は泣き止んだ。
泣き止んだ少年は、憑物が落ちたように普通の子供に戻っていた。
そして、俺達に話したこと、猫を刻んだ事も全て無かった事のように、
綺麗さっぱりと忘れ去っていた。

後日、少年の言っていた『怖いおばさん』・・・
女霊能者・天見 琉華の許に少年を連れて行ったが、
予想通り、彼女の霊視を以ってしても何も得る事は出来なかった。
 
 
おわり


次回の話を読む


【引用元:死ぬ程洒落にならない話を集めてみない?

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この記事へのコメント

  1. 怖い名無しさん 2015年06月02日 00:43:25

    今回の話、不完全燃焼な気分…


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